KnowledgeGraph Explorer: SimpleModelingの知識グラフを探索する
SimpleModeling.orgが公開しているコンテンツの知識を可視化するためのツールKnowledgeGraph Explorerの試作版を紹介します。
KnowledgeGraph Explorer
SimpleModeling.orgがBoK (Body of Knowledge)として提供するWebコンテンツは、人間とAIが共有する形式知となります。
人間はHTML文書を読むわけですが、AIに対してどのように知識を伝達するのかが重要な論点になります。
SimpleModeling.orgはBoKの内容をAIが理解可能な知識表現であるRDF(JSON-LD, Turtle)による知識グラフ (knowledge graph)として記述します。
AIはこの知識グラフを読むことでより精度の高い形式知を理解することが可能になります。
このRDFの内容を可視化するためのツールがKnowledgeGraph Explorerです。
知識グラフ
知識グラフは、現実世界や専門領域に存在する事物・概念・出来事をノード、それらの関係をエッジとして表現したグラフ構造の知識ベースです。 意味をもったリンク(語彙)で結ぶことで、人間とコンピュータの両方が、知識を横断的に検索・連想・推論・可視化しやすくなります。
RDFは、2004年にW3Cが正式勧告として公開され、2014年には改訂版のRDF 1.1が勧告された、知識グラフを記述するための標準的なデータモデルの体系です。 すべての情報を「主語–述語–目的語」の三つ組で表現し、Web上のあらゆるリソースを意味的に結びつけることを可能にします。
また、JSON-LDはRDF 1.1の正式なシリアライゼーション形式として位置付けられており、Web開発者が扱いやすいJSONの形で意味情報を表現できるため、SimpleModeling.orgのようなWebベースのBoKにとって非常に重要な役割を果たします。
RDFは、Web全体をひとつの巨大な知識ベースとして扱うことを目指すセマンティック・ウェブの根幹技術であり、SmartDoxやSimpleModelingのコンテンツをAIが理解可能な形式知として共有するための基盤となります。
SimpleModelingでは知識を記述するための語彙を知識語彙 (knowledge vocabulary)と呼びます。
標準知識語彙
- RDF
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データを「主語–述語–目的語」の三つ組として表現するための最基底メタモデル。リソースの識別子・述語・リテラルの基本構造を提供する。
- RDFS
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クラス、プロパティ、階層関係(subClassOf / subPropertyOf)などの“軽量意味論”を定義する語彙。RDFに基本的な意味付けを与える。
- OWL
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より表現力の高い“論理的意味付け”を行うための語彙。制約、推論、同値関係、分類などをより厳密に扱える。
- SKOS
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概念体系・シソーラス・分類体系を記述するための語彙。用語(概念)の上位/下位関係、別名、ラベル管理を標準化し、GlossaryやBoKの知識構造化に適している。
- DCTERMS
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メタデータ記述(タイトル、作成日、著者、主題、対象、ライセンスなど)を標準化する語彙。文書・Webページ・データ資源に付与する汎用メタデータ用のプロパティ群を提供する。
- Schema
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Web全体で構造化データを共有するための汎用語彙。Article、Person、Event、WebSiteなど、Web情報の一般的分類を提供する。
基本語彙
RDF・RDFS・OWL は明確な役割分担を持つ三層構造を形成しており、RDF が「データ構造」、RDFS が「基本的意味分類」、OWL が「高度な論理推論」を担うことで、知識グラフは単なるリンク集を超え、意味的に統合された知識体系として運用できます。
応用語彙
RDF / RDFS / OWL の三層が「知識の意味論」を支える基盤であるのに対し、SKOS・DCTERMS・Schema.org は“応用レイヤー”として特定用途の構造化を支援する語彙です。
- SKOS
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概念体系(Concept Scheme)を記述するための語彙で、用語集(Glossary)、分類体系(Category)、知識体系(Knowledge System)など、人間が使う概念の階層化・ラベル付け・別名管理を扱います。OWL のような論理推論ではなく、知識の組織化とラベル管理に特化しています。
- DCTERMS
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文書全体のメタデータ(タイトル、著者、作成日、主題、ライセンス等)を表現する語彙で、SmartDox 文書や記事、外部文献との関係を一貫したメタデータ形式で管理できます。
- Schema.org
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Web公開ドキュメントに広く利用される汎用スキーマで、Article、Person、Event、WebSite などの Web上の一般的構造を標準化します。検索エンジン互換性が高く、外部サービスやAIが理解しやすい「Webの共通語彙」として機能します。
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意味論(RDF/RDFS/OWL)
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概念体系(SKOS)
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文書メタデータ(DCTERMS)
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Web構造(Schema.org)
が統合された多層的なセマンティック知識空間として運用できるようになります。
SimpleModeling知識語彙
SimpleModeling知識語彙はSimpleModelingで定義した知識語彙です。
SimpleModeling知識語彙を活用することで、より精度の高い知識アプリケーションを構築することが可能になります。生成AIにも、より高精度の知識を提供することができます。
SimpleModeling知識語彙として以下のものを定義しています。
- https://www.simplemodeling.org/ontology/simplemodelingorg#
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SimpleModeling.org 全体の基本語彙。Article、GlossaryTerm、Category、Site など、サイト構造を記述するための中核スキーマ。プレフィックス smorg。
- https://www.simplemodeling.org/bok/ontology/0.1-SNAPSHOT#
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SimpleModeling Body of Knowledge(知識体系)を表現する語彙。BoK トピック、知識領域、参照関係などを記述する。プレフィックス smbok。
- https://www.simplemodeling.org/category/ontology/0.1-SNAPSHOT#
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カテゴリ分類(分野・テーマ)を表す語彙。記事・用語に紐づくカテゴリー階層のモデルを提供する。プレフィックス smcat。
- https://www.simplemodeling.org/docmodel/ontology/0.1-SNAPSHOT#
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SmartDox 文書構造を記述する語彙。文書、セクション、パラグラフ、図表、コードブロックなどの構造要素を表す。プレフィックス smdoc。
- https://www.simplemodeling.org/glossary/ontology/0.1-SNAPSHOT#
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用語集の概念を表す語彙。Term、Definition、Alias、Relation(broader / narrower)などを定義する。プレフィックス smglo。
- https://www.simplemodeling.org/bibliography/ontology/0.1-SNAPSHOT#
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参考文献情報(書籍、論文、URL等)を記述する語彙。著者、出版年、出版社、ISBN、引用関係などをモデル化する。プレフィックス smbib。
- https://www.simplemodeling.org/project/ontology/0.1-SNAPSHOT#
-
SimpleModeling に付随するプロジェクト(例:スマートツール、研究ライン)を表す語彙。プロジェクト名、成果物、関連コンポーネントなどを定義する。プレフィックス smproj。
- https://www.simplemodeling.org/simplemodel/ontology/0.1-SNAPSHOT#
-
SimpleModeling の「モデリング要素」(Entity、Value、Event、Rule など)を表現する語彙。モデルのメタレベル構造を表す基幹スキーマ。プレフィックス smodel。
- https://www.simplemodeling.org/componentRepository/ontology/0.1-SNAPSHOT#
-
コンポーネント (Component)リポジトリ(再利用コンポーネントの集合)を表す語彙。コンポーネント、インタフェース、依存関係などを定義する。プレフィックス smcompr。
現時点ではsmorg, smbok, smdoc, smglo を使って SimpleModeling.org のコンテンツの知識グラフを構築しています。
RDFをサポートする理由
SimpleModelingでは、文書・モデル・用語・設計知識・プロセス知識といった多様な形式知を統合し、AIと共有できる“知識ベース”として再構成することを目標としています。この実現のために、SimpleModelingはRDFを基盤技術として採用しています。
この統合を最も整合的に実現できる技術が RDF であり、SimpleModeling はその中核として採用しています。
RDFを採用する理由は以下の通りです。
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「文芸モデル (literate model)(Literate Model)」を機械可読な知識へ変換できるため
-
WebベースのBoK(Body of Knowledge)と高い親和性がある
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AI と精密に“意味を共有”するための唯一の標準
-
RAG(Retrieval-Augmented Generation (RAG, 検索強化生成))との統合で精度が飛躍的に向上するため
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複数の知識体系(SmartDox / CML (Cozy Modeling Language) / BoK / Process Models)を統合できるから
-
セマンティックAI (semantic ai)へ:未来標準としてのRDF
「文芸モデル」を機械可読な知識へ変換できるため
SmartDoxは、文章とモデルの両方を含む「文芸モデル」を構築します。
RDFはこの内容を:
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明示的な概念(Glossary Term)
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記事・章・節といった文書構造
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モデル要素(Entity, Value, Event, Rule など)
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相互参照(mentions, refersTo)
人間が読む文書をそのままAIの知識資源に変換することができます。
WebベースのBoKと高い親和性がある
SimpleModeling.org は Web そのものが BoK です。
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JSON-LD が Web の標準構造化データ
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HTML に埋め込める
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URL がそのままリソースIDになる
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分散した知識を統合しやすい
Web 全体を巨大なナレッジグラフにする設計思想は SimpleModeling のアーキテクチャと親和性が高いと言えます。
AI と精密に意味を共有できる唯一の標準
生成AIは文章理解が得意ですが、概念構造や関係の復元は不得手です。
RDFを用いると:
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概念階層(broader / narrower)
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モデル構造(Entity → Attribute)
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記事と用語の対応(article → mentions → term)
明示的に提供できます。
AIに「正確な意味」を伝えるには、RDFのような構造的な知識表現が不可欠です。
RAG(Retrieval-Augmented Generation)と相性が良い
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semantic retrieval(意味検索)
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graph expansion(記事→用語→カテゴリ…の自動連鎖)
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SmartDox の節構造を索引として利用
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必要知識のみの抽出(context packing)
といった利点があります。
複数の知識体系(SmartDox / CML / BoK / Process Models)を統合できるから
SimpleModelingの知識モデルは多層です:
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SmartDox(文書モデル)
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Category / Glossary / Bibliography
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SimpleModel / CML(オブジェクト関数モデル)
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Process Model(開発プロセス (Development Process))
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Component Repository
RDFはこれらすべてを単一のグラフ空間に統合できます。
さらに、RDFを採用することで:
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Wikipedia など外部の公開知識(Wikidata, DBpedia 等)
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書籍・論文・Web資料の bibliographic 情報(DOI, ISBN, CrossRef 等)
を同じグラフ上で接続できるため、SimpleModeling の知識体系を世界標準のオープン知識空間と連結できます。
これにより:
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文書 → モデル → 用語 → 設計 → 実装
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→(外部知識)Wikipedia / Wikidata / 書籍・論文情報
といった形で、知識が“階層を超えてリンク”し、AIエージェントが SimpleModeling 内外の知識を横断的・意味的に統合できるようになります。
外部の大規模公開知識を参照可能にすることで、AIの認識精度・回答の網羅性・用語 disambiguation(曖昧性解消)が大幅に向上します。SimpleModeling の BoK は、その「ハブ」として機能する役割を担います。
セマンティックAIへ:未来標準としてのRDF
生成AIの進化に伴い、“意味構造を持つ知識グラフ”を入力とする AI の重要性が急速に高まっています。
実際に、産業界・学術界ではすでに「グラフ × AI」が広く活用され始めています。
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Google の Knowledge Graph Web検索の背後にある大規模ナレッジグラフ(Google Knowledge Graph)
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GraphRAG(Graph-based Retrieval-Augmented Generation)ナレッジグラフを活用して RAG の精度を向上させる技術(Microsoft: GraphRAG in Semantic Kernel,Document GraphRAG: Knowledge Graph Enhanced RAG)
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Semantic / KG-enhanced LLM(学術研究)LLM とナレッジグラフを統合するアプローチを体系化した総説(Unifying LLMs and Knowledge Graphs)
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KG × LLM の応用事例(医療分野)医療ナレッジグラフと LLM を組み合わせた診断支援研究(KG + LLM (Nature Digital Medicine))
RDFまとめ
RDFは:
をひとつの意味空間として統合し、AI に対して 正確・構造的・機械可読 な形式知を提供します。
SimpleModeling が目指す知識駆動開発 (Knowledge-Driven Development)の基盤として、RDF は不可欠な技術です。
KnowledgeGraph Explorerを使ってみる
KnowlegeGraphはJavaScriptベースのシンプルなアプリケーションです。
以下のリンクをクリックすると起動します。
メニューからはトップ・ページやカテゴリ・ページの Lexicon → KnowledgeGraph で開くことができます。
初期状態
アプリケーションを起動した直後の初期状態の画面です。
画面上側にオペレーションバー、中央にグラフ表示域、右側にプロパティ表示域を配置しています。
全体
Load ボタンを押下すると指定された JSON-LD または Turtle 形式の知識グラフを読み込んで画面に表示します。
ノードを押下すると右側のプロパティ表示域にノードのプロパティが表示されます。
KnowledgeGraph Explorerの狙い
SimpleModeling.org は SimpleModeling による文芸モデル駆動開発 (LMDD, Literate Model-Driven Development)を支援する Web サイトです。 知識グラフは生成AIと正確な情報を共有するために使用します。
知識グラフとして構造化されやすいコンテンツであればあるほど、生成AIに正確に認識してもらうことが可能になり、開発者と生成AIで共有する形式知として価値が上がります。
知識グラフを可視化することで、以下のようなメリットがあります。
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ドメイン構造が一目で分かる
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記事間の関係が視覚的に把握できる
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用語の揺れ(vocabulary drift)を見つけやすくなる
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SimpleModeling.org 全体の “知識の地図” を構築できる
このような目的で KnowledgeGraph Explorer を開発して提供しています。
展望
SimpleModeling.org における知識グラフ整備は、単なる可視化の実験ではなく、知識駆動開発を実現するための基盤整備という明確な目的を持っています。
文書・モデル・用語・設計知識・プロセス・外部知識を一つの統合空間として扱う構想は、今後の開発環境において不可欠な方向性になると考えています。
知識グラフは、AI と人間が同じ意味構造を共有し、協働して開発を進めるための“知識のインタフェース”として機能する点に最大の価値があります。
知識駆動開発のための基盤としての知識グラフ
現代の生成AIは文章から推論できますが、複雑なドメイン構造やモデリング概念の整合性をテキストだけから誤りなく復元することは困難です。
知識駆動開発では、以下をすべて“構造化された知識”として AI に提供します:
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SmartDox(文書知識)
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CML / SimpleModel(モデル知識)
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Glossary / Category(概念体系)
-
Bibliography(参照情報)
これらの統合を可能にするのが RDF であり、KnowledgeGraph Explorer はその統合状態を目視できる形で示すツールです。
GraphRAG と RDF のより深い統合
テキスト中心のRAGでは、知識の階層構造・依存関係・意味的まとまりを保持したまま AI に渡すことが難しく、検索精度・回答一貫性にも限界があります。
GraphRAG と RDF を組み合わせることで:
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概念の意味的近接性
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上位・下位概念の自動探索
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モデル要素の関係性
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SmartDox 文書構造
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外部知識(Wikidata等)の連携
を AI に対して“そのまま”渡せるため、
AI が本当の意味で知識を使って開発を支援できるようになります。
知識駆動開発は、この Semantic AI の基盤と直結しています。
SmartDox → RDF → 知識アプリケーション という統合パイプライン
知識駆動開発では、文書を書くことがそのまま知識体系の更新になります。
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SmartDoxを書く
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→ RDF化される
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→ Knowledge Graphに統合される
-
→ GraphRAGやMCPエージェントが参照する
-
→ AIが設計・説明・コード生成を支援する
という 完全な知識創造ループ (knowledge creation loop)が成立します。
KnowledgeGraph Explorer は、この循環ループの“可視化レイヤー”として機能します。
外部オープン知識との統合による知識の拡張性
RDF 基盤を採用したことで、SimpleModeling の知識体系は:
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Wikipedia / Wikidata
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DBpedia
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CrossRef(DOI)
-
学術文献・書籍(ISBN、論文情報)
といった 世界中のオープン知識空間と接続可能になりました。
これにより知識駆動開発は“内部開発者の理解に依存する”ものではなく、外部世界と整合した、再利用可能な知識構造へと進化します。
AI にとっても、内部知識 × 外部知識の両方を参照できるという点で、回答精度・説明網羅性・用語曖昧性解消が大幅に向上します。
知識駆動開発を支える未来の基盤としての SimpleModeling
今後、開発手法は「コードを書く」から「知識を構築する」へ大きくシフトしていくと考えられます。
SimpleModeling はこの未来に必要な全階層を整備しつつあります:
これらを組み合わせることで、AI 時代に最適化された知識中心の開発基盤(Knowledge-Driven Development Platform)を実現することを目指します。
KnowledgeGraph Explorer は、その大きな体系のなかで、最初に“見える形で触れられる”ツールです。
まとめ
知識駆動開発は “人間の知識 → 構造化 → 意味化 → AIが活用 → 開発に還流” という新しい開発サイクルを実現するための方法論です。
SimpleModeling.org は、この未来に向けて RDF/SmartDox/CML/GraphRAG/Semantic AI を統合し、AI時代の知識中心の開発基盤として進化を続けていきます。
KnowledgeGraph Explorer をぜひ実際に触ってみて、SimpleModeling.org の知識がどのように意味的に構造化されているか体験してみてください。
参照
用語集
- KnowledgeGraph Explorer
-
SimpleModeling.org の RDF/JSON-LD/Turtle から生成される知識グラフを可視化し、記事・用語・カテゴリー・関係構造を探索できるアプリケーション。
- BoK (Body of Knowledge)
-
SimpleModelingでは文脈共有の核となる知識体系をBoK (Body of Knowledge)と呼んでいます。 BoKの構築は、知識の共有、教育、AIによる支援、自動化、意思決定支援を可能にするための基盤です。
- RDF
-
W3C により標準化された、情報を「主語–述語–目的語」の三つ組(トリプル)で表現するための知識記述モデル。
- 知識グラフ (knowledge graph)
-
現実の概念・事物・出来事をノードとし、その関係をエッジとして表す意味的グラフ構造の知識ベース。
- 知識語彙 (knowledge vocabulary)
-
知識を構造化し、人間とAIが共有するために用いる語彙体系。概念・関係・属性を定義する。
- 標準知識語彙 (standard knowledge vocabulary)
-
Undefined
- SimpleModeling知識語彙 (SimpleModeling knowledge vocabulary)
-
SimpleModeling が独自に定義した語彙体系で、SmartDox、BoK、Glossary、Category、SimpleModel などの構造を表現する。
- コンポーネント (Component)
-
責務・契約・依存関係を明示的に定義し、再利用可能で交換可能な単位としてカプセル化されたソフトウェア構成要素。論理モデルでは抽象構造単位として、物理モデルでは実装・デプロイメント単位として扱われる。
- 文芸モデル (literate model)
-
文芸モデル(Literate Model)は、モデル構造と自然言語による語り(構造化文書)を統合した「読めるモデル」です。 文芸的プログラミング(Literate Programming)の思想をモデリング領域に拡張し、 構造(モデル)+語り(構造化文書) を一体化することで、人間とAIの双方が理解・操作できる知識表現を実現します。 「Literate Modeling(文芸的モデリング)」という発想自体は、 これまでにも一部の研究者や開発者によって試みられてきました。 しかし、それらは主にドキュメント生成やコード理解の支援にとどまっており、 モデルと言語・語り・AI支援を統合した体系的なモデリング手法として確立されたものではありません。 文芸モデル(Literate Model)は、SimpleModelingがAI時代に向けて新たに体系化・提唱したモデリング概念です。 文芸的モデリングの思想を継承しつつ、 AI協調型の知識循環とモデル生成を可能にする知的モデリング基盤として再構成されています。 文芸モデルは、単なるモデル記述技法ではなく、 人間の思考過程や設計意図を語りとしてモデルに埋め込み、 AIがそれを解析・再構成して設計や生成を支援するための枠組みです。
- 検索強化生成 (RAG, Retrieval-Augmented Generation)
-
生成AIが内部(パラメトリック)知識だけでなく、外部の知識ソースを検索してから応答を生成する技術。 RAGはまずデータベースや知識グラフなどから関連情報を検索し、それを文脈として取り込み、より正確で最新の応答を生成する。
- CML (Cozy Modeling Language)
-
CMLは、Cozyモデルを記述するための文芸モデル記述言語です。 SimpleModelingにおける分析モデルの中核を担うDSL(ドメイン固有言語)として設計されています。 モデル要素とその関係性を自然言語に近い文体で記述できるよう工夫されており、AIによる支援や自動生成との高い親和性を備えています。 CMLで記述された文芸モデルは、設計モデル、プログラムコード、技術文書などに変換可能な中間表現として機能します。
- セマンティックAI (semantic ai)
-
知識グラフ(RDF/OWL)を基盤とし、AI が意味構造を保持したまま知識を理解・推論・生成するアプローチを指す。
- 開発プロセス (Development Process)
-
開発プロセスとは、ソフトウェアの構築・運用・保守に関わる活動全体を指します。 計画、設計、実装、テスト、リリースなどを含み、ソフトウェア開発の一連の流れを体系的に表現する概念です。
- 用語曖昧性解消 (term disambiguation)
-
複数の語義を持つ用語について、文脈・知識グラフ・語彙体系をもとに、どの概念(term)を指すのかを一意に決定するプロセス。RDF/OWL の識別子(URI)を用いて語義を明確化する。
- 知識駆動開発 (Knowledge-Driven Development)
-
知識を中心に据え、AI支援とモデリングを統合して進化する開発パラダイム。
- 文芸モデル駆動開発 (LMDD, Literate Model-Driven Development)
-
文芸モデル駆動開発(Literate Model–Driven Development, LMDD) は、自然言語による語りと形式的なモデル構造を統一されたテキスト基盤上で統合するソフトウェア開発手法です。従来のモデル駆動開発(MDD)を拡張し、ドキュメントとモデルを単一の整合的ソースとして扱います。 LMDDでは、開発成果物の記述要素と構造要素をSmartDox言語を用いて同時に表現します。この統合的な表現から、ModelDoxが構造データを抽出し、CML(Cozy Modeling Language)がドメイン固有モデルを定義し、Cozyが実行可能なコード、ドキュメント、構成情報などの成果物を生成します。 人工知能(AI)は、語りの文脈を解析し、構造の整合性を検証し、モデルおよび生成成果物の改良を支援することでLMDDプロセスに関与します。すべての成果物はテキスト形式で表現されるため、トレーサビリティ、バージョン管理、標準的な開発環境との相互運用性が確保されます。 ドキュメント、設計、実装の間に形式的かつ機械可読な関係を定義することにより、LMDDは人間による記述と機械による推論が同一の表現層で機能する、AI支援型モデル駆動開発の基盤を提供します。
- 知識創造ループ (knowledge creation loop)
-
文書(SmartDox)、モデル(CML/SimpleModel)、語彙(Glossary/Category)、設計知識(BoK)を RDF により統合し、AI がそれらを参照して生成・改善した結果を再び文書へ反映することで成立する、AI時代の知識更新の循環プロセス。